腕時計が動かなくなった。2ヶ月ほど前に学校付近の時計屋で電池交換した時計だ。1ヶ月ほど前にも一時止まったがその時はすぐに動き出した。今度は完全に止まって動かない。「中国の電池は物が悪いなあ。安かろう(8元)悪かろうか。」と思った。スーパーの店頭にいつもいる時計屋に再度修理に行った。客は誰もいなかった。隣の店の婦人が座っていた椅子を無言で小生に差し出した。ありがとうと言って座った。彼は時計を分解し掃除をしているようだ。その後通訳の学生に言った。「ゴミが詰まっていたので掃除した。もし、また動かなくなったら持ってきてくれ。」と。修理費はいらないと言う。小生は今まで「中国製品は…。彼の技術は…。」だからすぐに動かなくなったんだ、と思っていた。ああ、恥ずかしい。なんと言う了見の狭い人間なんだ。間違った先入観でこの国を見ていたんだ。先入観で中国を見ているなんて微塵を思っていなかった。しかし時計屋の彼が「君は先入観で中国を見ているんだ」と教えてくれた。 またひとつ教えていただいた。この国へ来てから多くのことを教えてもらっている。 ありがたい。感謝だ。
昨日、彼の写真を撮りに行った。了解を得て彼の写真を撮っていると、隣の婦人がペラペラペラと長沙弁でまくしたててきた。「ティンブトン(聞いても分からない)」と答えた。そこしゆっくりと話しかけてきた。「国はどこか、内モンゴルか」と問うているような気がした。「日本だ」と答えた。近くの中年の店員さんも寄って来た。椅子を勧められたので座ると「身長はいくつか」と質問した。扇風機を小生のほうに向けさらに質問が続いたが聞き取りできない。「謝謝」は日本語で「ありがとう」と言うとみんなで「ありがとう、ありがとう」と言うではないか。うれしいねえ。そのうち時計屋の彼がタバコを差し出した。吸えないので丁重に断った。昨日は「先入観」を教えられ、今日は「温かさ」を教えられた。 今日、牛乳とヨーグルトを買いにスーパーに行き時計店の前を通ると彼と目があった。隣に座ってちょっと話しをした。彼は王さんと名乗り71歳だ。隣の店員に小生のことを「日本人の友達」だと紹介した。71歳の成年と新たな付き合いが始まりそうだ。 |