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2009/06/6 発音練習 |
生徒は総じて発音に悩まされている。 特に「カッコ」などの促音(っ)や、おとーさんの「長音」そしてら行音が苦手だ。 「がっこう」が「がこう」、「おばさん」と「おばあさん」のゆゆしき混同、「らりるれろ」が鼻音の「なにぬねの」に変化するなど。 いわゆる母語の発音の影響が強い。私も英語の「L」で先生を悩ました口である。 リカちゃんは心根優しくとても勉強熱心な娘だ。そんな彼女が時々「わたし」を「わっし」と発声してしまう。 若い綺麗な娘に「先生わっしと一緒に食事をしましょう」と言われるとおお神よ救い給えと思ってしまう。 滞在の残り少なくなった私は「リカ発音改造計画」を立てて対面練習をしようと提案した。母音、子音から特殊音までマニュアルと首っ引きでボイストレーニングを始めた。 先生の歯並びの悪い口元を見ながら彼女は手鏡を見ながら唇の形を確認する。若い娘に口元を見られるのはトテモ恥ずかしいが少しづつ効果が表れてきたようだ。 「稽古は結構難しい」のフレーズが「けこは、けーこ むずかしい」から「けーこは、けっこう!」に変わる日ももう間近かだろう。 中国を去る頃には彼女達と一緒に食事をしながら言葉の神様に感謝する日が訪れるように願っている。 |
2009/05/21 卒業試験 |
704クラスはいよいよ来週の火曜日が卒業である。 卒業試験が今週から始まり私の担当の日本語会話はこれからの入社試験に備えて面接形式で試験を行うことにした。 質問内容は予め8項目ばかりを知らせておいた。みんな緊張して面接室に入る。 「自己紹介」の後に「日本語を勉強しようとした動機」、「将来の夢」「最近の関心事」「家族のこと」などの質問に答えてもらう。 「あなたの将来の夢は」の質問では数人の女子学生が「貿易会社をつくって社長になりたい」と答えたのに少々驚いた。 「まず日本の会社に通訳として入り仕事を通して貿易のことを学びたい。そして将来は彼氏と小さな貿易会社をつくりたい」と言うのだ。 彼氏が社長ではなく“自分が社長になって会社を育てる”と言うところに中国女性の強さがある。 小柄な彼女らの何処にそんな逞しさが秘められているのだろうか。 「日本の会社は残業が多いが大丈夫ですか」と聞けば「先生、大丈夫です。まかしてください」と胸をはる。 会話は流調ではないが、2年間の猛勉強を終えた満足感と7月の日本語能力試験に臨む緊張感の顔が輝いている。私はもちろん即座に及第点をつけ彼女らの健闘を祈った。 |
2009/05/19 スピーチコンテスト |
今年のスピーチコンテストの形式は朗読に決まった。 今年の2月末に入学した新入生から2年生まで一同に集まって長沙大学の大教室で発表会が開催された。 司会から会場作りまで生徒主体で進められる。今年の司会は男性生徒の魏さん、女性は頼さんが受け持つことになった。 審査員は私と渥美さんの日本人教師2人と本校の先生3人の計5人。 さて、出場者はまず作品の選択から始める。インターネットバーや本屋に行って、気にいった作品を見つけ出すのに皆苦労したようだ。 インターネットでは中国人が書いた日本語エッセーが沢山掲載されているようだが誤文や誇張文も多い。 先輩や先生にみてもらい自分が納得いく文章に修正を加えてながら練習を行ったようだ。 発表者の顔には緊張の様子が漂っている。その中で今年のコンテストは始まった。 まだ勉強を始めて3か月余りの新入生から発表が始まったが朗読の上手なのには驚いた。 朗読の滑らかさやアクセントも正確で猛練習の成果がにじみ出ている。 順々に発表が続けられるが原稿をあまり見ずに話している。それぞれ緊張する中で、こまやかなに感情を表現しながら語る人、冷静に淡々と話す人など多くの個性がぶつかり合い面白い。 「どうしてこの作品を選びましたか」「どんな所をみんなに伝えたいですか」などの質問には朗読を終えたほっとした安堵感の中でニカミながらぽつりぽつりと答える。 甲乙つけがたい出来栄えが多かったが優勝は1年生の李さんに決まった。 日本の昔話からとった「山寺の小僧と子供の我慢の話」は我慢して猛勉強し続ける彼女の心を打つものがあったのであろう。 そしてその共感が素晴らしい朗読に繋がったのであった。 |