路面電車と街づくり
朝日懇話会かごしま
2001年2月7日
 朝日新聞 朝刊 
水曜日
私の住んでる鹿児島市の商店街「ナカマチ・ベルク」は昨年、アーケード五周年記念の

イベントとして、街を主題とした写真の一般公募展を開催した。

 見事,大賞を獲得したのは、真っ赤なボディカラーの市電が天文館の街を走る写真

だった。

 (二十一世紀へ残すあなたのとっておきの一枚は?」というサブタイトルをつけた写

真展だったが、結構、市電をテーマにした写真が目立った。

 「おぎおんさー」や「おはら祭」をテーマの写真も多かったが、何故か、鹿児島の風景

というイメージは湧いてこなかった。

 街側から見て(こんな商店街を目指したい)と思うことと、一般の来街者が(こんな町

になって欲しい)と願うこととは、出来れば一致する事が望ましい。 公募展が示したよ

うに、多くの市民のイメージする鹿児島の街の原風景は、七色に変わる雄大な櫻島を

目の前に市街地を走る市電の姿ではないかろうか。

 私達の中央地区は十一のアーケード街といくつかの通りで連合会を結成している。

 五十五万都市の中心市街地にふさわしい街づくりを目指して、活動を続けている。

 ところで、合同イベントを企画する度に、ネックになるのが、道路と車対策である。

 天文館を十文字に分断している照国通りと電車道で街は車の排気ガスと騒音に悩ま

されている。

 アメニティを求めて街に出てくる人々は、街区をまたぐ度に、信号や、車に神経をとが

らせることになる。ほとんどは街に用のないただの通過車両のために。 そして私達の

、なけなしのイベント経費はその大部分が、車対策のもろもろで消えてしまう。

 人にやさしい街づくりを目指す私達にとって、照国通りのモール化は最大の願いといえ

る。外国の都市では、路面電車が新たな市民権を得て都市交通の重要な役割を果して

いるという。 

 流線型の美しいロングボディに、大きな窓、静かに、音も無く走ると聞く。



 想像するに新幹線のミニサイズといったところか。二両編成で、市街地を離れると、

高速運行をする。    そんな電車が天文館を走るのを想像するのは楽しい。

 車両の床面が道路との差が殆どない超低床車「LRVという」の最大の特徴は、乗り

降りの面から、(人にやさしい、バリアフリー車である)ということと、当然のことながら

、車に比べ環境に優しいことである。今の路面電車への郷愁もたち難いけど、LRVの

導入は、鹿児島の都市イメージを高める、二十一世紀の新しい交通システムとえる。

 先日、新聞紙上で発表された鹿児島市のマスタープランの中で、「市電延伸の可能

性の検討」「市街地の交通緩和のためのパークアンド・ライド等交通システムの検討」

はかなり斬新かつ大胆な提案といえる。

 天文館のトランジット・モール化への道標が出されたわけだが、これはなかなか難しい

問題である。国や自治体の支援なしで事業体である交通局だけでは採算はとれない。

 結局は鹿児島市の情熱と市民の支援,それに街側のコンセンサスがピラミッドの頂

点に達した時でないと実現は難しい。

 よく不可能と言われるけど、市街地への車の乗り入れと、トランジット・モールとの

共棲(共成?)ははかれないものだろうか?

 現実の問題として、郊外にパークアンドライドを設置して、大量公共輸送機関以外の

車を市街地から締め出すと言う事は、とても難しい。しかし、とりあえず、(おはら祭り)や

(祗園祭)の時の交通規制、「天文館の歩行者天国」の実施は不可能ではないのではな

かろうか 今年中に日本で三番目のLRV(超低床車)がわが街・天文館を走る。

しかも初の国産LRVと聞く。きっと日本中から、見学者が訪れるに違いない。

 新年の赤崎市長の抱負「他の都市に1歩先んじた市政を心がける」を実行した。市長に

拍手を送りたい。


 今世紀のいつかは、鹿児島独自のユニークな天文館トランジット・モールが完成して
、 
 道路は公園化され、行き交う市民の中を、静かに、LRVがすべるように走る、そんな光景

を夢見る。

(新聞に掲載した文に若干、加筆してあります。)

 

橋本謙太郎(33)  指宿商業高校教諭

氏は昨年、2000年の朝日懇話会かごしまでご一緒したというより5人の委員の中で(路面電車と街づくり)
に関しては、最も先をいかれている、いはば、リーダー格です。
 私の場合、朝日新聞社の方より「路面電車について意見を、」と言われた時、丁度、ベルクでストリートギャラリー5周年記念・21世紀の玉手箱「21世紀へ残したい私のとっておきの一枚の写真公募展」を終えたばかりで、応募作品の中に、路面電車をテーマにした写真がとても目に付いていた、そんな程度の認識で、通りの仲間も、「やっぱり、チンチン電車か、西郷さんかナ、カゴッマは・・」つまり、郷愁として、また県外で廃止されていく傾向にある電車を遺産としても残したい。程度でした。
 市街地の交通機関としての見直し論を考える委員会とは知らずのお恥ずかしい委員でした。
 新聞社の支社長から「街側の意見を聞かせて頂ければ、バリアフリーのイベントもされておられるから、そのへんからの切り口もいただければ、」そんなお話でお引き受けした次第です。 お礼に1年間の無料購読も魅力でした。(いきさつが長くなりましたが)そんなわけで、私も、インターネットでサーフィンを重ね、世界の、日本の(路面電車事情を少しはかじらせて頂きました。)が何と行っても、橋本氏は熱意が違います。
 そこで、氏の了解を得て、私のホームページ上でこれから、いろいろ、世界の、日本の、そして、鹿児島市の「路面電車と街づくり」について意見を、時々頂くつもりです。
 街には街の意見もあります。そういう意見も出来たら紹介しながら、ページが進んでいけば幸いです。

 さて,貴兄のメールにもありましたとおり,鹿児島市にもいよいよ超低床電車
が登場します。これは,全国初の純国産のもので,超低床車としては,熊本,
広島に次いで3番目の導入になります。車体の長さが14mですから,熊本の
タイプよりもかなり短く,現在走っている車両(12.5m)より多少長い程度です。
ただ,台車を運転台の直下に持ってくるため,客室は完全にフラットで,熊本の
ようなタイヤハウス(車内の出っ張り)もありませんので,かなり詰め込みのきく
構造になるそうです。我々が理想とするヨーロッパ(ストラスブールやグルノーブ
ルなど)のLRVにはほど遠いですが,まずは「バリアフリー化」の第1歩というと
ころでしょうか。(途中、一部カット)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
 ところで,「LRV」という名称は,超低床電車を意味するものではなく,「LRT」
という交通システムに用いられる高性能の車両全般をさします。従って,アメリカ
に多く見られるような,高床式の車両(ホームを嵩上げすることで事実上のバリア
フリーを実現している)も,LRVです。LRTのスタイルにもいろいろあるので,
必ずしも「LRT=超低床電車を使用した交通システム」というわけではありません。
鹿児島市電が今後どのような方向へ向かうのかまだ不透明ですが,超低床車を
入れることが本決まりになりましたから,ヨーロッパ方式,つまり超低床車を中心
とした交通システムに移行していくことになるでしょう。
 欧米では,中心市街地活性化のために車を規制し,「パークアンドライド」と「トラ
ンジットモール」をうまく活用することで,街を生き返らせていますね。先日,「かご
しま夏祭り」のときに歩行者天国となった電車通りを歩いてみて思ったのですが,
商工会議所が中心となって,「トランジットモール」の実験をしてみてはどうでしょうか。
「かごしま夏祭り」「おはら祭り」のときは,全ての交通が遮断されて歩行者天国と
なるわけですが,ここに電車だけ通してみるのです。電車だけですので,軌道敷を
露店に使用しないだけで済み,朝日通や高見馬場から延々歩かずに済みますよね。
一度実験してみれば,問題点も浮き彫りになるでしょうし,何より,「これがトランジ
ットモールというものか」と,市民に啓発することができると思います。
 来月,福井鉄道の市役所前〜福井駅前で,トランジットモール実験が行われます。
福井鉄道は,郊外電車用の大型車両が路面軌道に乗り入れるタイプの特殊な形態
ですが,一応「路面電車」の仲間であり,実験では,自社所有の路面電車タイプの
車両1両と,名古屋鉄道から路面電車用の車両(部分低床の800形)を1両借りて
走らせるそうです。どのような成果が出るか楽しみです。
 よく「車社会から取り残されると街がさびれる」と思われがちですね。谷山中心市街
地も,駐車場がなく,自家用車利用者からそっぽを向かれた結果,街がさびれたと
いわれています。でも,自家用車の利便性に代わる交通機関があったらどうでしょう。
川内も,国分も,そのような交通機関がなかったから中心街がさびれたのだと私は
思うのです。確かに駐車場も必要でしょう。でも市電や多くのバスが乗り入れている
天文館周辺では,地方都市の中心街とは様相が異なると思うのです。毎日どれほど
多くの人が市電やバスで中心街に出向いているか。休日など,自家用車は駐車場待
ちで渋滞し,決して便利だとは思いません。(実際,私も自家用車で街に出向いたこと
がありますが,渋滞でイライラし,市電の方が便利だと確信しました。)
 天文館周辺のお店では,「セラ602」の駐車券を提供するところも多いですが,あれ
は自家用車の利用者にだけのメリットですよね。自家用車びいきではなく,市電やバス
の乗車券の補助もあっていいのではないでしょうか。例えば・・・
店主「お客様,本日は電車・バスをご利用ですか,自家用車をご利用ですか?」
客 「はい,今日は電車で来ました。」
店主「では,お帰りの際この利用券をご利用下さい。」
・・・と,駐車券の代わりに乗車券を渡す。商工会と交通局やバス各社がタイアップして,
公共交通機関の利用を促す。このような施策も今後は必要だと思います。
 
 長くなりましてすみません。またお会いしてゆっくり語る機会があればよいですね。
私もまだまだ勉強不足です。どちらかというと「市電びいき」ですので,別な見方も必要
かもしれません。ただ,公共交通機関,特に市電が将来性のあるシステムであることは
欧米その他の例を見ても間違いありません。今後は,街づくりの一環として,市電やバス
の活用をいろいろな観点から検討していくべきであると私は思います。
 それではこの辺で失礼いたします。
以下の文は橋本氏より2001年9月6日17:05頂いたメールです。
私の質問「鹿児島にも案外早くLRVが実現しましたね。」に対してお返事を頂きましたので
紹介させて頂きます。
 
大石さん、大変ご無沙汰しております。朝日懇話会でご一緒した橋本です。
メールどうもありがとうございました。

大石慶二 様
 
 メールありがとうございました。お陰様で9月28日から職場復帰,
多少疲れやすくはなっているものの特に異常もなく普通に生活して
おります。
 鹿児島市電の低床車は,全国初の純国産です。全国から視察に
訪れる人が多くなると思われます。熊本や広島のものとはかなり
様相が異なりますが,「まずは今の技術でできる車両」ということで,
大いに評価できると思います。12月上旬には納車され,約1ヶ月の
試運転の後,1月15日から営業運転を行う予定です。
(途中の文をカットしてあります。)・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
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 実は,10月26日に「路面電車サミットin熊本」,翌27日には福井
市で行われている「トランジットモール社会実験」を見に行ってきまし
た。(←そのくらいの元気はあるということですね。)
 特に,福井市のトランジットモール実験は,実際に駅前商店街を
歩行者天国にし,その中を通っている福井鉄道市内線に名鉄から
借り受けた部分低床電車(昨年美濃町線に導入されたもの)を走ら
せるというもので,大変興味深かったです。詳細は当該ホームペー
ジをご覧下さい。アドレスは以下の通りです。
http://www.city.fukui.fukui.jp/rekisi/tyusin/trans/toppage.html
 この件についても,貴兄とぜひお話ししたいと思います。商店街の
姿勢など,問題が結構あるようです。

送信者: 橋本謙太郎  2001/10/28
超低床電車ついに鹿児島初登場!!
2002年1月15日・正式デビュー
<超低床車初登場!・愛称は「ユートラム」に決まる!1月15日式典
谷山港に陸揚げされた1011号
2号車・3号車・も数日後登場!

超低床電車「ユートラム」初出発!!
2002年1月15日午前10時45分。鹿児島駅初。
赤崎市長のごあいさつ
本市の路面電車は、昭和3年に開業し、これまで70年余りにわたり市民に親しまれ続けております
そして、今日、環境にやさしい交通機関として、また貴重な観光資源として、全国的にその利点がみなおされてきております。
 このような中,本市におきましては、この度国産初の超低床電車を導入いたしました。
 この電車は電車停留所とほとんど段差がない床高ですべての人が利用しやすい、まさにバリアフリー時代にふさわしい乗り物です。 
 また、従来の電車に比べて静粛性が高く、省エネが図られており,車体の外観は南国鹿児島の明るい太陽をイメージしたイエローと人や環境へのやさしさを表すベージュで彩られています。
 新しい超低床車両が、人と環境にやさしい快適な街づくりを進める本市の新しいシンボルとして、広く市民の皆様に愛され、多くの方々に利用されることを願っています。  

                              平成14年1月   
                                        鹿児島市長  赤崎義則

谷口交通局長による挨拶
赤崎市長・下村市議会議長・老人クラブ代表・・によるテープカット
ユートラムの初運転手・有村さんへの鍵渡し式
ブラスバンドも色を添えた出発式
ユートラムの広い運転席・窓が広い
広い客席

「ユートラム」運行開始
超低床のバリアフリー電車
南日本新聞 2002(平成14年)1月16日
                  水曜日
3両導入  乗り場との段差5センチ


電車の進化に追いつかず    停留所の4割 車いす「不可」
「ユートラム」とは・・・・・・
車体の長さ・・・・・・14メートル、幅・・・・2.45メートル、 高さ・・・3.6メートル
              従来より一回りおおきい。

外壁の色・・・・・・・南国の明るい太陽を表すイエローと優しい雰囲気のベージュ色

愛称は・・・・・・・・・路面電車の「トラム」と『優」「悠」「友」「YOU」といったイメージ

価格は・・・・・・・・・一両あたり約一億七千万円

その他・・・・・・・・・37ある電停のうち22ケ所で車いすでの乗り降りができる。

特長・・・・・・・・・・・床が平らでぬれても滑りにくい素材で出来ている。ドアに近い
            二ケ所の座席を折りたたむと車いす用のスペースになり、出口
            の床版は反転するとスロープにもなる。
            振動と騒音は従来に比べ半減。
            座席下にあった機器類を天井と運転席に移し車内はすっきり。

指宿高校の橋本様より、早速
Goodな写真がメールで届きました。
左と下の二枚です。

中振連C委員会 出席(にぎわい通り・はいから通り・照国通り・コアモール・納屋通り・中町ベルク
               いづろ通り・金生ウェーブ・天文館一丁目・平岡理事長・以上10名 ・菊地事務局長)

● 天文館フリーチケットについて
   ○ 別紙フリーチケットの概要
   ○ 交通事業各社の反応(精算方法とうについて)
   ○ 各通り会理事l長並びに連合会加盟事業所へのお願い
   ○ 今後の日程について
   ○ 広告スポンサーをどうするか。
   ○ 各駐車場への周知と利用駐車場の拡大
   ○ 一般市民への周知は記者発表により各報道機関に依頼。
   ○ 加盟店への周知と利用加盟店の拡大
   ○ 市営駐輪場へも利用出来る様鹿児島市と協議
   ○ 駐車場に設置する案内のぼり旗のデザインの検討
   ○ 加盟店に「フリーチケット」のステッカーのデザイン検討

●  ○ 使用開始を八月中を予定。

● 
天文館フリーチケットの概要
  1、これまでの共通駐車券
   ○ 平成5年度に発足し、約30ケ所の民間駐車場を利用して「天文館地区で買い物をしたお客様に
    対して、100円の共通券をサービスしていた。 
   ○ 共通駐車券は買上げ金額おおよそ3000円に一枚進呈しているが
      発券については各加盟店の判断に任せている。
   ○ 加盟店は11商店街振興組合傘下店(530店)の約半数。
   ○ 年間発行枚数は約12万枚で 平成10年をピークに減少気味。

  2、 天文館フリーチケット
   ○ 自家用車を利用しないお客様に対してもサービスを提供できる。
   ○ 無人駐車場が増えてきて、駐車券の利用がしにくい。
   ○ 土日は駐車場が満杯になり 待ち時間が長い
   ○ 買い物客の利便性を考慮すると 公共交通機関の利用と併せたサービスを。  
   ○ 市民、各種消費者団体からも要望が多い。
 
 
討議

  ● (委員長より)各組合の代表委員へ「既にそれぞれの理事会でフリーチケット 
    実施に付いての説明と組合理事との間のディスカッションは行われたかどうか」
    の質問に対して、半数以上から「今からです。」との答えでした。

    2,3の組合からは とてもいい反応だった。との答えで 今のところ、「中町ベルク
    のような、
再検討の要あり の意見は聞けませんでした。

    理事長の方より
   「西駅本駅化とJRビルの出現は、長崎駅ビルの完成により市街地商店街の受けた
   影響の甚大さは計り知れないものがあった。
   鹿児島の場合も少なからず影響がでるのは間違いない。そうなってから慌てて何か
   販促をする のでは、まさに、それは対応策ということになり、世間やマスコミに「あわて
   だした中央商店街」と見られてしまう。
     私は思うんですが・・・・
   各個店は売り場であり、天文館商店街は巨大な平面デパートである。との認識をもっ
   て欲しいんですで、ですから 宣伝にしても、駐車場にしても、又 それに替わる交通
   券にしても各売場やテナントも代償を分担するのだ。との認識がやはり、必要じゃない
   のか。
   街の魅力はそれぞれのお店と その店、店で構成される街のバラエティ、そして 
   どこか ゆったりとくつろげるアメニティな空間。そんな、すべての要素の集まりで成り
   立っていると思います。 ですから、その辺の話を 是非、それぞれの集まりの際は強
   調してください。

  ● C委員会に於ける討議は「フリーチケット」の拡販について等・・・積極策中心の意見の
    交換でした。次回、24日は中振連企画委員会が開かれます。
橋本健太郎氏よりのご提案もありました[共同駐車券」での電車・バスでの使用可
について鹿児島市中央地区商店街振興組合での取り組みと実現へ向けて。
天文館フリーチケットについての詳しい内容は「2002バリアフリー天文館」のページにあります。